三番だしくらいの斬新な番外 涼露 |
三番だしくらいに斬新な番外 涼露 「わー、パチパチパチ」 とあるターキーなビルの照明のきいた窓のない部屋で二人の少年が拍手していた。 「まさか本誌に出られるとは思ってなかったね! どうだいこの空気! 密室の空気だけどなんだかとても爽やかだ!」 片方の少年が両手を広げながら、まるで芝居でもしているかのように言った。 「そうだね。さらにいいニュースだ。僕たちに名前がつけられることになったぞ。ここにその紙がある」 もう片方の少年が落ち着いた声で封筒を空け、そこから一枚の紙を取り出した。 「二人の名前は、希望通り太郎と次郎に決定しました……」 そして読み上げたが、最後の方はだんだん声が小さくなっていった。 「ちょっと待てええええええ! 希望はしていない! そんな猿みたいな名前を希望した覚えはない!」 最初の方の少年(たった今“太郎”の名を貰った)が怒鳴り散らした。 「まあ、続きが書いてある」 冷静だった方の少年(次郎)が期待を込めて続きを読み上げた。 「男同士が密室でこんなくだらない話をやっていても見ていられないので、太郎くん消えてください。代わりにエリカちゃんを送り込みます」 「……へ?」 「……というわけだ。短い間だったが楽しかったよ太郎くん。ここでサヨナラだ」 「ちょっと待てってえええええ―――」 太郎は作者の陰謀によって闇の中に消え去った! 太郎の悲鳴が消え去ったと同時に、ドアも窓もない部屋に突如、次郎と同じくらいの年頃の少年が現れた。つまり、十五歳くらい。 「はじめまして。エリカです。可愛い娘って設定だからS尻Eリカさんから名前とってきたんですけど、作者は別にS尻さんのこと好きなわけじゃないですよ」 そう言ってモデルのようにとんでもないほど可愛い少女が挨拶をした。次郎はいきなりに美少女登場にどぎまぎしつつも 「ああ、はい、よろしくお願いします」 と冷静を装って返事をした。 「ところでこの話は、いったい何の話なんですか?」 エリカが不思議そうに尋ねてくる。 「それが、僕もよく知らないんですよ」 次郎は事前に何も聞かされていないので答えることができなかった。 「このお話は、危機に陥りつつあるJACKPOTを救うために無茶苦茶にやって盛り上げようという不条理ギャグモノです」 自分から聞いておきながらエリカはスラスラと答えた。 「みるみるページ数が減っているうえに、今の三年生の先輩方が完全に引退してしまったら本当にJACKPOTはダメになってしまうわ。だからどうにか盛り上げるための最後の抗戦よ。バルジの戦いでは綿密な作戦のおかげで連合軍を押し返したし、紫電改だって有終の美を飾ったわ!」 「……わかんねーよ」 熱っぽく語るエリカに次郎は適当で冷め切った返事をした。 「そのなんとかの戦いは綿密の計画されたんだろ? この話は、きっちり計画された末の話か?」 「いいえ、M北S史さんが二十七ページ提出するとか言ってたから、それに乗っかって分厚い誌にしてやろうって思っただけよ?」 次郎の冷静なツッコミにエリカはまともな答えを返せない。だって実際そうなんだもん。 「じゃあそのなんとか改は、有終の美を飾れたってことはすごかったんだろ? この話はすごいのか?」 「見てのとおり、人によってはとても読んでいられないふざけた不条理ギャグモノよ。逆の意味ですごくはあるかもしれないわ」 もはやエリカは開き直りに近い返答を寄越した。 「えーと……、これ、続けるの?」 「一話完結だから続かない予定よ」 「いや、そういう意味じゃなくて……」 「安易なお色気とベタベタなギャグは自滅の原因だと思うのよねー」 唐突にエリカは言い放った。 「しっかり長袖着込んでるくせに何がお色気だよ……」 「何か言った?」 「いえ、何も」 ジロッと睨まれて次郎は口をつぐんだ。きっと将来、お嫁さんの尻にしかれるタイプです。 「ベッタベタなギャグって、この不条理ギャグに満ち溢れた話でギャグについて語れるのか?」 「えい!」 次郎を指差したエリカの指先から、灼熱の炎が迸った。 「ぎゃああああああああ」 次郎は炎に包まれて絶叫したがすぐに起き上がった。 「ふざけんな! 殺す気か!」 「えい!」 再び次郎を指差したエリカの指先から、今度は何が飛び出すのかと身構えた次郎は、頭上から突如落ちてきた雷に打たれた。 「ぎゃあああああああ」 しかしまた次郎はすぐに起き上がり、 「だから何のつ――」 「えい!」 今度は床から無数の槍やら剣やらが飛び出して次郎を貫いた。しかしこのお話は年齢制限がかかるようなお話ではないので、グロい描写になることなく、つまりは血は一切飛ばず、怪我も負うことなく次郎は起き上がった。 「殺す気なのか貴様は!」 次郎が怒鳴ったがエリカは気にした風もなく、 「不条理ギャグモノだから何でもあり! 怪我しない! 素晴らしい世界でしょー?」 とニコニコ言っている。 一方の次郎は全身が痛いのだが、何せ全身を炎が焦がし雷が貫き槍やら剣やらが切り刻んだので、どこを押さえていいか分からなかった。 「もう、やってらんねーよ。……もう止めにしないか?」 そう次郎が切実に言うと、エリカはハッとした。 「え……。駄目! ぜったいそれだけは駄目!」 「い、いや、冗談のつもりだったんだけど……」 不安そうな声でいきなり目の前まで迫ってきたエリカに驚きつつ次郎は弁解するが、 「じゃあ……これで許してくれる?」 エリカは突然服のボタンをはずし始めた。 「ま、待て! 早まるな! このお話は年齢制限かからないはずだったんじゃないのか!」 「大丈夫。描写しないから……」 いつの間にか服のボタンを全て外したエリカは次に下着を外そうとそのフックに(以下略 次郎は己の全ての欲望を押さえ込み両手で目を覆い、気付けばしなだれかかってくる格好になっているエリカに耐えた。 「誰にでもするわけじゃないのよ? あなただけ……」 エリカはその次郎の手をとって己の(以下略 次郎のエリカに手をどけられて自由になった目は、自分の存在意義を問うかのごとく光を得ようとして開こうとしたが、その瞬間に物凄い衝撃が次郎の頭部を襲い、次郎は気を失った。 次郎の目が見開かれる寸前に次郎を蹴り倒したエリカは、その場で溜息をついた。 「つーか今日会ったばかりだし……」 弄ばれて気絶した可哀想な次郎を見下しながら、エリカは服をひろいあげた。 しばらくして息を吹き返した次郎はとんでもないほどビックリした。世のモテない男が見たら核ミサイルの発射ボタンでもあっさり押してしまいそうになる体勢、まあエリカに膝枕されていたのだ。 「ごめんね……、私、変なことしちゃって……」 悲しい顔で謝るエリカに次郎はまたもやドキッとした。散々な目に遭わされてきたが、やはり可愛いものは可愛かった。 「ガンダー●ヴもこんな気持ちだったのかな。こんなにいじめられてもドキドキするって。でも、あれみたいに現実はそう簡単に鼻血出ないから良かったなぁ」 「……現実は、って説得力ないわねぇ……」 半分どこかの世界に行ってしまった次郎は放っておいて、エリカは先に進めようとした。折りたたまれた紙切れを胸の谷間から取り出す。 「谷間とかなかっただろ」 次郎は実感をそのまま言った。 「って! 見たの!」 エリカは見られる前に蹴り倒したのに! と思いながらビックリして聞いた。 「そりゃ、不条理ギャグだもん。心の眼で見てたさ」 「クーーーーーー」 エリカの怒りによって次郎は部屋どころか世界から完全に消滅した。エリカ一人の状態で終わるのもなんなので代わりに次郎二号が部屋に送り込まれた。どこかで太郎が「俺を出せよー」と言った気がしなくもない。 「このお話は、早くも来年の新入部員がいっぱい来てくれないとやばいなあとか考え始めてるJACKPOTとあっさり廃れちゃった左折ブームの再興、リマン海流の勢力拡大、美少女(私)の素晴らしさの宣伝のために作られました。本当を言うと筆者の自己満足です。書いてて楽しかったです。あと、S尻Eリカさんが主演映画の会見でどーたらって話はこのお話を書いてる途中に知りました。でも、名前は変えません。とゆーか、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございまぁす☆」 最後だけ可愛くと書いてあったので最後だけ可愛くポーズまで決めて、エリカが読み終えた。その隣で次郎二号が機械的に拍手をしていた。パチパチパチ…… |