体育祭

花笠 柚癒

 体育祭。それは熾烈を極める闘争なのである。

 体育祭は、たぶん新入生の諸君が一番初めに経験する大きな行事だと思われる。去年の体育祭では、一学年八クラス(を三学年分)が四つの団(赤、青、黄、緑)に分かれて、いくつもの競技を戦い抜いたのである。今年は、なぜか一年が一クラス増えたらしいので、どうなるかまだわからない。なので、新入生諸君は、その辺は参考程度に見ておいてほしい。

 体育祭は、本番の何日も前から始まるのである。まず、クラスでは「クラスTシャツ」なるものを作る。当日には、これを着て、より団結力を高めるのだ。デザインは表裏、学年ごとに団で共通のものと、クラス別の二つが必要となる。大体、クラスのデザインは全員の名前+担任の名前が、かなりの確立で含まれるものとなる。ちなみに、そのデザインは律儀にクラス全員から集められるので、絵に自身がないものや、嫌いな者には苦痛の時間になるだろう。私もその一人である。Tシャツの色こそ団別なので選べぬものの、Tシャツのデザインに使える色のバリエーションが割とある。ラメなんかも使えたりするが、そこかしこにラメが付着するので、気をつけること。

 Tシャツの他には、「応援団員募集」がある。競技のひとつでもある、応援合戦(といっても、学ランを着て、太鼓のリズムに合わせて大声を張り上げるようなものではない)に出場したいという人が募集されるのだ。応援合戦は、簡単に言ってしまえばダンスである。二、三年が中心となって各団ごとに、個性あふれるダンスを作り上げ、発表する。練習は昼休みや放課後などに行われる。詳しいことについては後に触れることとする。

 球技大会なんてものも開催される。学年の枠を取っ払って、ドッジボール、バスケットボール、バレーボール(女子のみ)サッカー(男子のみ)と四種の球技で競い合う。なお、準決勝以降は体育大会の中で行われる。もちろん、これも盛り上がること必至である。一年生は、確かに勝ち上がる確率は少ないが、去年だって準決勝以降に進出し、大健闘した一年生のチームはあった。あきらめるのはまだ早い。

 体育祭の準備は壮絶である。中でも運動部員には、テントの設営なんて重労働(?)を任される可能性もある。放送器具も大量の配線を必要とし、放送部員の人数ではとても追いつかないため、たくさんの助っ人が借り出されることになるだろう。

 さて、大分待たせてしまったが、当日についての話をしよう。競技種目については、楽しみが半減するであろうからあえて触れないことにして(決して忘れたわけではない)。体育祭は、開会式の集合時からすでに戦闘なのである。開会式は、ただ炎天下の中、並んで始まりを待つものではない。待機場所であるテントから、いっせいに走り出て、我先にと生徒たちは列を成していくのである。正面から見ると、圧巻ものだ。しかし何故、彼らはそんなにも必死になるのだろうか? それは、その集合の速さまでもが点数になるからなのである。

 自治会長が、クラスの着順を発表し終えてから、ようやく開会式が始まる。ちなみに、ここでの登高賦は同窓会の人々が感慨深く聞いているらしいので、元気よく歌うこと。

 待機場所は運動部員が前日に立ててくれるテントの下である。しかし、ここには同じ団員、三学年(一学年二クラス、約八十人×三学年=約二百四十人)が、詰め掛けることとなる。もちろん、人数とテントの数は、つりあっていない。そうなると、必然的に新入生諸君はテントに入ることは難しくなるであろう。たとえ、入れたとしても多少の肩身の狭さを感じることになるかもしれない。悪いことは言わない。早いうちにテント以外の安住の地を見つけておくことをお勧めする。

 また、競技の中には例の「応援合戦」がある。応援合戦は、観客に入れられた票によって順位が決まる。得点が入ったかは申し訳ないことに忘れてしまったのだが、票の獲得数が一番多かった団は、最後に表彰されたはずである。球技大会についても同じく。

 閉会式のときには、開会式のようなまねはしないので安心してくれたまえ。表彰が行われ、総合優勝が決まった瞬間、広大なグラウンドに、歓喜の叫び声が響き渡る。惜しくも総合優勝を逃した団からは、悔し涙を流すものも出てくる。生野生は、何事にも全力なのである。本気なのである。

 オリエンテーションなんかで、映像を見ていたとしたら、私のこの文章と相違点が出てくるかも知れない。そのときは、迷わず映像を信じるべきだ、と最後に忠告を残した上で終わることにする。



JACKPOT61号掲載
背景画像:空に咲く花

閉じる